むし歯治療
歯の構造
エナメル質
体の中で一番硬く、密度が高い組織。ほとんどが無機質からできていて、細菌が好む有機質はほとんど含みません。そのため虫歯の進行は遅い。再石灰化(再生)はわずかに起こります。
象牙質
細い管状の構造をしています。有機質を多く含んでいる柔らかい組織。そのため細菌が進入しやすいので中で増殖しやすい。虫歯の進行は早く、大きくなると痛みを感じることがあります。再生は起こりません。
歯髄
痛みを感じる神経や栄養供給をする血管。ほとんどが有機質からできています。細菌が歯髄に進入してくると激しい痛みを感じるようになります。再生は起こりません。
歯根膜
歯と骨の硬い組織の中にはさまれていて、クッションの働きをしています。歯触り、噛み応えなどを感じることができます。噛んで痛みを感じるときは、この部分に炎症があります。再生能力はそれほど高くありません。
セメント質
エナメル質と比べると硬さも密度も劣りますが、再生能力は高く、歯肉が下がってセメント質が出てくると、密度が低いため温度による痛みが出てくることがあります。これを知覚過敏といいます。
歯槽骨
歯を支えている骨。歯肉に細菌が進入して炎症が起こると骨は溶けてしまい、支えを失った歯はぐらぐらしてきます。再生能力は高くありません。
歯周ポケット
歯と歯肉の接着部位。まるでポケットのように少しくぼんだ溝になっています。歯周病はここから細菌が進入して、進行します。
虫歯のお話
歯の状態によって、虫歯の進行具合を段階に分けることができます。虫歯は気づかない間に進行してしまうため、痛くなってからでは手遅れになります。定期的に歯科健診を受けて初期の段階で虫歯を見つけましょう。
CO
エナメル質の表面が酸によって白く濁った状態、もしくは溝が茶色になった状態です。見た目にはほとんどわかりづらい、虫歯の初期状態。この程度なら再石灰化が期待できますので、しっかり磨いて進行を防ぎましょう。また、フッ素により、虫歯の進行の予防、再石灰化の期待ができますので歯科医院での相談をお勧めします。
C1
エナメル質内に細菌が進入して穴があいた状態です。ここまでくるともう再石灰化はほとんど期待できません。
また、この時点では、まだ痛みを伴う自覚症状はほとんどありません。小さいうちに治療しましょう。
C2
象牙質まで細菌が進入した状態です。象牙質は柔らかいので、虫歯は中で大きく広がります。大きくなると冷たい水や風がしみるようになります。甘いものや暖かいものがしみるようになると歯髄(神経)を取る可能性が高くなります。
C3
歯髄まで細菌が進入した状態です。歯髄には痛みを感じる神経を含むため、細菌が進入すると炎症を起こし激しい痛みを感じます。熱いものがしみてズキズキ痛み出します。これを歯髄炎といいます。
C4
歯の根だけが残る末期症状。歯髄炎を放置すると、その痛みはある日なくなります。それは治ったのではなく、神経が死んでしまって感じなくなっているだけなのです。さらに放置すると歯の根の先から歯根膜に炎症が起こり、硬いものを噛んだりすると痛みや違和感を感じるようになります。
根尖病巣
骨の中まで細菌が進入し、根の先に細菌と膿が溜まっている状態です。噛んだときの違和感や痛みが出る場合がありますが、通常あまり症状はありません。
しかし、細菌の勢力と体を守っている免疫のバランスが崩れると膿の量が増えて激しい痛みが出ます。
症状がある場合や根尖病巣が大きい場合は、根の中に消毒薬を入れて細菌の数を減らして、痛みや違和感を抑える治療をします。
しかし、一度根の先に細菌が侵入すると完全に取り除くことは不可能で、再発の可能性があります。放置するとまれに喉や骨、骨の中の神経、最悪の場合脳に細菌が進入し炎症が起こり大変なことになる可能性があります。
細菌について
口の中の細菌は虫歯、歯周病、そして最近では、胃潰瘍、糖尿病、肺炎、心内膜炎などの内臓系の疾患とも関わりがあると言われています。その口の中に住む細菌のかたまりを特にプラークといいます。
プラークは歯の表面に付着していて、白くてやわらかく独特な臭いがします。例えばつまようじで歯の表面を引っかいて先についてくるプラークだけで、細菌が一億も含まれているといわれています。口の中は一定の温度と湿度、さらに栄養分の補給もあるため細菌の格好の住処です。
特に細菌が住みやすく、虫歯になりやすいのは図の三箇所です。
プラークは時間の経過によりすぐに繁殖します。しかも歯を磨かなかったり、同じ場所を毎回磨き残していると、細菌は無害なものが減り、凶悪な性格のものが増えます。
CMでおなじみのプラークコントロールとは、歯を磨くことで細菌数をできるだけ少なく、無害なものに留めることです。完全に細菌を無くせないので、プラークをコントロールするのです。自己流で磨くと磨き残したり、ブラッシング圧が強く歯が削れてしまったりします。
また歯並びや歯肉の状態によってプラークコントロールの方法が違うので、歯科医院で歯の磨き方を習いましょう。
虫歯の予防法
ガムを活用した予防
代用甘味料
砂糖は細菌の大好物。細菌は砂糖を分解した栄養を採取して繁殖し、そして酸を発生させます。この酸が歯を溶かして虫歯を作るのです。
また、代用甘味料とは砂糖の構造を複雑にして細菌に分解できないようにしたものです。キシリトールやステビアなどもそうです。キシリトールはさらに細菌を抑える働きもあり注目されました。
アパタイトやカルシウム
アパタイトとはエナメル質の大部分を作っている成分で、カルシウムも入っています。
アパタイトや○○カルシウムという名前のものは、再石灰化を狙ったものが多いです。
ただし再石灰化はCO(虫歯の初期)にしか期待できません!!
リカルデント成分
配合のガム 厚生省より特定保健用食品に認定されたガム。初期の虫歯に有効な成分、CPP-ACP(リカルデント)の配合により、脱灰を修復して、再石灰化を促す「虫歯になりにくい食品」としての効果が認められています。
脱灰の始まる食後に20分間噛むと効果的のようです。(時間や回数はあくまでも目安です)
うがい薬を活用した予防
うがい薬の裏の成分表示を見てください。主なものは下に説明をしています。
ただしプラークコントロールができなければ効果はほとんどありません。うがいをするのは歯磨き後が効果的です。
トラネキサム酸 ・・・炎症を抑える
塩化セシルピリジウム ・・・細菌の殺菌
クロルヘキシジン ・・・細菌の殺菌とプラークの抑制
フッ素 ・・・歯質の強化
例えば、パーフェクトペリオは非常に効果的です。お口の中で盛んに繁殖する細菌もパーフェクトペリオに30秒漬けると死滅します。パーフェクトペリオの効果的な使用法は、使用前にブラッシングで汚れを落とす。
そして、10mlをお口に含み30秒はお口の中でブクブクしましょう。
虫歯とは細菌による感染症です。殺菌洗口剤を効果的に使用して細菌の数を減らしましょう。
MTAで神経を残す治療
歯の神経を守る:MTA歯髄(神経)温存療法
MTAとはケイ酸カルシウムが主成分のMTAによる覆髄治療であり、従来の水酸化カルシウムセメントによる治療と比べて、高い確率で神経を残すこと(歯髄温存)ができます。
従来の虫歯治療とは…
大きな虫歯を治療したり銀歯の再治療等の際に神経が露出することがあります。従来はその際に神経を取る治療を行うことが一般的でした。
しかし、歯の神経(歯髄)は、歯に感覚を伝え、栄養を与え、その上ばい菌から身体を守る免疫の働きなどを受け持つ大事な組織です。また、神経を取った歯は歯根破折や感染なのど問題が起こりやすくなり、結果的に歯の寿命を大きく縮めてしまいます。
そこで生体親和性が高く 封鎖性の良いMTAセメントという材料を用いて露出した神経を直接覆い可能な限り神経を温存するMTA覆髄治療(歯髄温存療法)に取り組んでおります。
歯髄を残すことの大切さ
歯髄は、歯の最も内部にある神経や血管がある部分で、歯に加わる色々な刺激を感知することによって痛みから虫歯などの疾患を気付かせたり、歯髄内に存在する免疫細胞が細菌に抵抗したり、侵襲に対して第二象牙質を形成するなど、歯髄組織は防御機能として重要な役割を果たしています。
また、歯を失う原因には、虫歯や歯周病、外傷、咬合等様々ですが、最も多い原因が歯根破折で喪失歯の約6割を占めているといわれています。
歯根破折を起こすほとんどの歯が神経のない歯(失活歯)であり、過去に虫歯などが原因で神経を取る処置がされています。
ですから、神経を保存することが歯の寿命にとって非常に重要であるという認識のもと、神経を取らずに残す方法を心がけています。
MTA歯髄温存療法の適応ケース
- 虫歯と歯髄が非常に近接している。
- 虫歯と歯髄が一部交通している状態でも神経が感染を起こしていない場合。
- 温かいものが強くしみる症状がある際は、既に神経が不可逆的な感染を起こしている可能性が高いので、歯髄温存療法を試みても抜髄(神経を取る処置)が必要になる可能性が高くなります。
- 虫歯が大きくても自覚症状が出ていない場合は、高い確率で神経を残せます。すなわちC2(象牙質に至る虫歯)までの虫歯が適応症です。
- 既に神経が死んでしまっている歯や、明らかな感染性の炎症を起こしている歯(C3)は適応外です。
MTA歯髄温存療法の流れ
う蝕検知液で虫歯だけを染めて、完全に除去する。露髄が起きた場合でも周囲に感染象牙質を残さない。
生体親和性がたかく封鎖性能良い、MTAセメントを用いて露髄部を直接封鎖します。その上にフローレジンを使用し、確実に接着封鎖する。
当日、あるいは後日型どりを行い、次回の来院時に詰め物を装着し治療が完了です。
治療後一時的に痛むことがあります
MTA歯髄温存の直後は、虫歯を除去した際の刺激や覆髄処置の刺激によって、一時的に歯が過敏になります。冷たい物などでしみたりする場合がありますが、多くの場合経時的に軽減・消失していきます。
治療後も痛みがひどいとき
MTA歯髄温存を行っても 処置後に症状が生じた場合や神経の生活反応が消失した場合は、通法どおり抜髄に移行する可能性があります。
保険適用外の治療です
費用:27,500円(税込)
インプラント治療における一般的なリスクや副作用
- インプラント治療は、自費診療(保険適用外)となります。
- 骨の成長途中のお子様(およそ18歳未満の方)は、インプラント治療はできません。 また、痛み止め、抗生物質等を使用するため、妊娠中の方、妊娠の可能性のある方、授乳中の方は、インプラント治療を控えてください。
- 心臓の疾患、骨粗鬆症などの方は、内科的な側面からインプラント治療に適さない場合があります。また普段服薬しているお薬等も治療に影響する場合があるので、治療前に歯科医師に申告してください。
- インプラント治療は、外科手術を行う必要があります。手術では、今までは問題がなかった神経や血管などにも手を加えることがあるため、リスクが生じます。また、手術自体受けられない場合もあります。
- 免疫力や抵抗力が低下しやすく、歯周病の発生リスクが高いとされる糖尿病の方、口腔内の衛生状態の悪い方、顎の骨が足りない方、喫煙者の方は、事前に生活習慣の改善・治療が必要な場合があります。
- インプラント治療は、顎の骨に穴をあけて人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を被せます。インプラントが骨に接着するまでに約3~6ヶ月の治癒期間を要します。また、骨造成手術を行う場合は、さらに治療期間がかかります。
- インプラント手術の際に下顎神経に触れた、もしくは近かったなどの影響により、下歯槽神経の損傷(知覚異常や鈍麻)を起こす場合があります。インプラントによる神経の圧迫・損傷・切断がある場合は、インプラントを撤去します。状況によっては、経過を見る場合や、内服薬で治療を行う場合もあります。
- 上顎にインプラントを埋める際に、上顎洞を破るリスクがあります。手術した時に感染が生じると蓄膿症になる場合があります。この場合、インプラントを除去することがあります。
- インプラント手術直後は、違和感・痛み・腫れ・出血などが発生する場合がありますが、一時的なもので、多くの場合2~3日でおさまります。
- インプラント治療後は、定期健診とメインテナンスを継続する必要があります。インプラントは日ごろから丁寧なメインテナンスが必要です。また、口の中の衛生状態が悪いと、インプラント周囲炎(インプラントの歯周病)という病気にかかる可能性があります。